2014年9月25日木曜日

My Recommendations No.19 「科学はなぜ誤解されるのか:わかりにくさの理由を探る」

HBS総合診療歯科学分野教授の河野文昭先生にご推薦いただいた図書の3冊目が,ついに入荷されました。
「科学はなぜ誤解されるのか:わかりにくさの理由を探る」(垂水雄二著 / 平凡社)です。
 河野先生,ありがとうございました。



それでは,河野先生の書評をご紹介します。

本書は,著者自身が翻訳にかかわったリチャード・ドーキンスが広く読まれている一方で、『利己的な遺伝子』という言葉に込めた著者の意図と一般人の受け取り方には大きなズレがあることを示し,限定的な意味で使われるべき学術的用語や概念が,自分に都合のいい部分や都合のいい解釈で誤った理解のもとに使用されることが多いことを示している。その誤解は,科学者側のねつ造と情報操作やパラダイムの違いによって起きる誤謬によって生じる。他方,受け手が正しい情報と誤った情報を区別することが容易ではないことや,メディアの歪曲した情報発信などによっても生じる。
また,我々がよく使う比喩的表現は,それを用いると理解を助けるという功がある反面,腑に落ちる部分だけをわかったつもりになるという罪もある。研究者は学術用語の意味を限定して使っているが、一般人はその用語をしばしば他の意味に理解し,一般に使用されることが多いことを実例で示しながら,科学の理解が得られない理由を論じている。
後半は,ダーウィンの「進化論」,「利己的な遺伝子」を例としてあげ,科学的思想の受容における誤解と歪曲について具体的に述べている。 



1階中央ロビーに今日から展示していますので,ぜひお立ち寄りください。