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2026年8月31日月曜日

My Recommendations No.205「七帝柔道記Ⅲ〜湖に星の散るなり」

 徳島大学医学部臨床教授・美波病院院長 本田壮一先生より、My Recommendationsコーナーに下記の図書をおすすめいただきました。


本田先生、ありがとうございます。


湖に星の散るなり 七帝柔道記 Ⅲ

増田俊也著 角川書店 (2026/03)


それでは、お寄せいただいた書評をご紹介します。

 

 北海道大学で柔道漬けの青春を送った小説家・増田俊也(としなり)の教養小説(Bildungsroman)の第三弾である。高専柔道の流れにある寝技中心の七帝戦は、東京大学など七つの旧帝国大学が競う。副主人公が、増田の2年先輩の和泉唯信教授(徳島大学脳神経内科)。増田は、4年目にて北海道大学を中退(Ⅱ巻)し、札幌の新聞社に就職した。校閲部や整理部に配属され、その描写も力強い。 

 七帝戦で最下位を脱出した北海道大学柔道部は、優勝へ向け、「打倒京都大学」を合言葉に猛練習に励む。翌年、増田の一学年下の木戸勉が率いる北大柔道部は七帝戦で3位。その翌年、二学年下の西岡精家が率いる北大柔道部は準優勝。そしてついにその3年目、三学年下の吉田寛裕が率いる北大柔道部で悲願の七帝戦優勝を果たす。その後に衝撃的なできごとが起こる。

 NHKEテレの「こころの時代〜宗教・人生〜医師にして僧侶 和泉唯信」を観られた方も多いと思う(2025年10月12日放映)。ALS(筋萎縮性側索硬化症)は、全身の筋肉が痩せ衰え、やがて呼吸不全に至る難病。30年間で700人、日本で最も多くのALS患者と向き合ってきた和泉唯信先生は、意思表示も難しくなった患者の家を無償で訪ね、全国各地を奔走してきた。故郷・広島県三次市の寺の住職でもある。やがてすべての人に訪れる死をどう考えるのか。医師にして僧侶である和泉先生は、そこにどんな「生きる意味」を見出してきたのか。この番組で、30年間走り続けたのは、亡くなったY氏のことがあったからと述懐される。 「表面をなでるような手ごたえのない仕事を続けるのでなく、一つでもよいから自分の納得のゆく仕事をしたい」と述べ、ALS治療薬のロゼバラミン(高用量メコバラミン筋注薬)の開発に、根気強く取り組んだ。

 タイトルの「湖に星の散るなり」は、北海道大学の恵迪(けいてき)寮寮歌の冒頭(昭和16年)。また、2026年7月には、福岡で第75回全国七大学柔道優勝大会が開催され、北海道大学は第3位となった。優勝は、佐田政隆教授(循環器内科学)が活躍した東京大学と聞いた。



本日(8/31)より、蔵本分館1階ホール、My Recommendationsコーナーに展示しております。前作【立てる我が部ぞ力あり(七帝柔道記Ⅱ)】,前々作【七帝柔道記】も同じコーナーに展示しておりますので、ぜひ手に取ってご覧ください。


TK

2026年8月4日火曜日

My Recommendations No.204「翠雨の人」

徳島大学名誉教授 吉本先生より、My Recommendationsコーナーに下記の図書をおすすめいただきました。

吉本先生、ありがとうございます。

翠雨の人

伊与原新 著  新潮社 (2025/7/30)

それでは、お寄せいただいた書評をご紹介します。


猿橋賞で知られる猿橋勝子博士の生涯を描いた書だ。

最初は医学を志すも、新設の帝国女子理学専門学校に入学し物理を専攻。そして、中央気象台にて地球化学者・三宅泰雄に師事し、炭酸物質測定法の開発やオゾン層の変動を説明する理論モデルを確立した。さらに昭和29年のビキニ事件(ビキニ環礁での米国の水爆実験で、第五福竜丸が被曝した事件。重症患者は東大病院に入院し、後に徳島大学医学部第一内科教授となる三好和夫医師が治療にあたった)における「白い灰」の微量分析や海水中の放射性セシウム測定のための濃縮法を開発した。

米国スクリプス研究所の科学者から海水中放射性セシウム濃度の分析結果の正確性を糾弾されたため、単身渡米し、彼女の分析法が米国の研究所の方法より高精度であることを証明した。その結果、北太平洋西部の放射能汚染の深刻さが認知され、部分的核実験禁止条約に繋がった。大気圏内核実験が行われていた小学生時に「雨に濡れるな!髪の毛が抜ける」と注意されたのを思い起こす。



本日(8/4)より、蔵本分館1階ホール、My Recommendationsコーナーに展示する予定です。ぜひ手に取ってご覧ください。


T.K


2026年7月10日金曜日

My Recommendations No.203「明治・大正・昭和の細菌学者たち―北里柴三郎から藤野恒三郎まで」

 徳島大学名誉教授 吉本先生より、My Recommendationsコーナーに下記の図書をおすすめいただきました。


吉本先生、ありがとうございます。


明治・大正・昭和の細菌学者たち―北里柴三郎から藤野恒三郎まで

竹田美文 著  大阪大学出版会 (2025/12/5)


それでは、お寄せいただいた書評をご紹介します。


徳島県立脇町高校の先輩である竹田美文・国立感染症研究所・元所長が、我が国の細菌学者の業績をわかりやすく紹介している。

北里柴三郎(第1章)や野口英世(第4章)の業績は良く知られている。

志賀潔(第2章)は腸チフスのヴィダール反応を参考にして赤痢の原因菌を発見した。赤痢菌の属名Shigellaは志賀に由来し、日本人の名前がついている唯一の例だ。著者は小学2年時に赤痢で避病舎に隔離されたという。秦佐八郎(第3章)は、志賀も留学歴があるエールリッヒのもとで、最初の化学療法薬である梅毒治療薬(砒素剤606号)を開発した。

長與又郎(第5章)は、河水の氾濫する地域に流行する「つつが虫病」の病原体としてオリエンティア・ツツガムシ(現在名)を発見した。実験室感染死が10名に至ったという。稲田龍吉・井戸康(第6章)は発熱・黄疸・出血を伴う死亡率の高い風土病から新種のスピロヘータであるワイル病の病原体(野口英世が属名レプトスピラと提唱)を見出した。耳鼻咽喉科・外科を専門とする大原八郎(第7章)は妻に感染実験を行い、野兎との接触によって起こる野兎病の病原体を発見した。開業医である馬原文彦(阿南市)による日本紅斑熱の発見もコラムに記されている。著者の指導者だった藤野恒三郎(第8章)はシラス中毒事件の原因解明において腸炎ビブリオ(現在の和名)を分離したが、国際的に認知されたのは23年後だったという。

感染症の学習において、新規病原体発見の逸話を知ることにより理解が深まること間違いない。




本日(7/10)より、蔵本分館1階ホール、My Recommendationsコーナーに展示する予定です。ぜひ手に取ってご覧ください。


T.K


2026年6月25日木曜日

My Recommendations No.200~202 附属図書館長大山先生推薦 

大山陽介先生(附属図書館長・理工学部数理科学コース教授)より、

My Recommendationsコーナーに下記の図書をおすすめいただきました。

大山先生、ありがとうございます。


タイトルとともに、お寄せいただいた書評をご紹介します。


(No.200)銀河の片隅で科学夜話

全卓樹 朝日出版社 (2020/02/19)


 高知工科大学で図書館長を務められておられる全卓樹さんは、どこか戦友のように感じられる(お会いしたことはないけど接点はあった)。

 この本では、数式を全く使うことなく、宇宙や生物学やGoogleのページランクの話など科学のさまざまなトピックを横断してゆっくりと散策しています。時代もベクレルの昔の話もあればインターネットのレビューによる「多数決」の危険性まで様々な時系列で緩やかな流れで語られています。

 数式を全く使わない科学解説で面白いところまで書くのは難しいのですが、現代的に成功させた一冊です。


(No.201)数学のまなび方

彌永昌吉 ちくま学芸文庫 (2008/11/10)


 私は「〇〇のまなび方」「〇〇の書き方」という本が嫌いである。学び方は人それぞれで共感できた試しがない。偉い学者の学び方など凡人の私に参考にならないのである。

 では、なぜこの本を薦めるかというと、この本の一節 

 『数学者の吉田(耕作)さんは,"われわれにわかりよいように…抽象的に願います"

  といわれました.森口(繁一)さんは"これはたいへんおもしろい。会社の人たちの

  集まるときには,われわれにわかりよいように…具体的に,といわれるのですが"』 

という箇所が、数学のまなび方ではないけれど、数学者の考え方をよく示しているから。

 そこだけでも手に取って読んでみてください。この本は数学と関係ない、こうした与太話が楽しめる本です。


(No.202)数学の言葉で世界を見たら

大栗博司 幻冬舎 (2025/03/26)


 著名な物理学者である大栗博司さんが「娘に贈る数学」と著した科学解説です。

 初学者向けに数学の解説をすると、素数とか幾何やトポロジーの話がどうしても多くなり、本書でも素数の話は扱っているが、物理学者の視点からか一味違う切り口になっている。こうした解説では珍しく微積分についても少し触れている。

 大栗さんは大学で私の1年先輩であって学生時代から交遊がある。その頃も今も、大栗さんは数学者の私よりも数学がずっとできて、いつもわかりやすくキレの良い話をされます。少し数式が出てくるところもあって大変なのですが、わかる章だけでも読んでみてください。




蔵本分館1階ホール、My Recommendationsコーナーに展示しております。ぜひ手に取ってご覧ください。


T.K.

2026年6月12日金曜日

My Recommendations No.199「整形外科 : 生活の質を支える」

徳島大学名誉教授 吉本先生より、My Recommendationsコーナーに下記の図書をおすすめいただきました。

吉本先生、ありがとうございます。


整形外科 : 生活の質を支える

田中栄編  岩波書店 (2026/4/21)


それでは、お寄せいただいた書評をご紹介します。


 我が国の整形外科の黎明期である120年前は、先天性内反足や先天性股関節脱臼などの小児の疾患が多くを占めたが、近年は、骨粗鬆症による骨折や変形性膝関節症などの高齢者の疾患が急増している。

最近は、ナビゲーションシステムの導入や手術道具の精密さ及び人工関節の耐久性の向上とともに、関節リウマチや骨粗鬆症などの薬物療法の進歩が著しいのが特徴だ。学生時代の教科書である「小整形外科書 改訂第6版 綾仁冨彌著 金芳堂 1977年」においては、骨粗鬆症治療には蛋白同化ホルモン剤や栄養補給を、関節リウマチ治療には非ステロイド性抗炎症鎮痛剤、副腎皮質ステロイド剤、金製剤、D・ペニシラミンと記載されており、現在では大きく様変わりしている。

本書により、世界で最初の母指完全切断による再接着の成功例や進行性扁平足、脆弱性骨折ドミノ、がんロコモなどの概念などの知見が広がった。それぞれの専門家が、わかりやすく説明しているので理解しやすい。一読をお勧めする。






本日(6/12)より、蔵本分館1階ホール、My Recommendationsコーナーに展示しております。ぜひ手に取ってご覧ください。


T.K.

2026年5月26日火曜日

My Recommendations No.198「三十一文字のドラマ : 和歌に生きた人たち」

徳島大学医学部臨床教授・美波病院院長 本田壮一先生より、My Recommendationsコーナーに下記の図書をおすすめいただきました。

本田先生、ありがとうございます。


三十一文字のドラマ : 和歌に生きた人たち

谷知子著 淡交社(2026/1)



それでは、お寄せいただいた書評をご紹介します。



 版を重ねている角川ソフィア文庫「百人一首(全)ビギナーズ・クラシックス 日本の古典」(2010年)の著者、谷知子教授(フェリス女学院大学)1の近刊を紹介する。谷さんは、名西郡神山町のご出身。お世話になっている谷憲治院長(東洋病院)の妹さんで交流がある。

私どもは、第58回全国国保地域医療学会(沖津修 学会長。学会のテーマは、「地域包括ケアで日本の未来を切りひらこう~海・山・川の恵みの阿波あわの国での実践~」。)を、徳島市で開催した(2018年10月)。そのときの特別講演に、谷さんに「古典のすすめ、そして阿波の国」の題目でお願いし、好評を博した2。ご専門の中世和歌を中心に、「病」・「老い」・「死」の人生観や美意識を解説いただいた。

 短歌・俳句は日本独自の文化である。五七五七七の音律の歌を、古今和歌集の頃から「和歌」と呼び、現代は「短歌」と呼ばれることが多い。本書では、古事記の「あなにやし、えをとめを(まあ、なんていい女だろう)」から、坂本竜馬の「世の人はわれをなにとも言はば言へわがなすことはわれのみぞ知る」まで、20の歌人(グループも)の和歌と現代語訳、そしてわかりやすい時代背景を含めた解説がなされている。百人一首で有名な持統天皇や、柿本人麻呂、大伴家持、小野小町、在原業平、菅原道真、紀貫之、和泉式部、紫式部、藤原俊成、西行、藤原定家、源実朝、後鳥羽院などの「推し」の和歌やその歴史背景も興味深く読める。一方、京都の葵祭につながる斎院だった式子しょくし内親王や、永福門院、後水尾ごみずのお天皇の和歌も学べた。さらに、良寛(江戸時代後期の僧侶)や、幕末の志士(佐久間象山や吉田松陰、龍馬)の章からは、往時は和歌が必須の教養だったと理解した。

 私どもの医学部の学生時代(1977年から83年)は、1・2年は教養部(常三島キャンパス)にて、語学(英語・ドイツ語)や日本文学、歴史などを学ぶ機会があった。現在は、専門教育で学ぶことが増え、大学入学後に日本文学や外国文学に親しむ時期がないのを憂う。臨床現場で患者さんと語るときや、自分の将来を考えるときに文学の素養は、とても役立つ。平易な解説や現代語訳は読みやすく、千年を越える日本の和歌の入門書として本書を推薦したい。

【参考URL、図書】

1 谷知子(フェリス女学院大学)

  ⇒https://www.ferris.ac.jp/academics/teachers/japanese-literature07.html      

 2 谷知子:古典のすすめ , 角川選書 , 2017



本日(5/26)より、蔵本分館1階ホール、My Recommendationsコーナーに展示しております。ぜひ手に取ってご覧ください。


T.K.

2026年4月24日金曜日

My Recommendations No.197「思春期・青年期悩みの特効薬 : 悩みぬいた青春期の私を励ましてくれた珠玉の名言集:悩みぬいた先に成長がある!」

徳島大学医学部臨床教授・美波病院院長 本田壮一先生より、My Recommendationsコーナーに下記の図書をおすすめいただきました。

本田先生、ありがとうございます。



思春期・青年期悩みの特効薬 : 悩みぬいた青春期の私を励ましてくれた珠玉の名言集 : 悩みぬいた先に成長がある!


谷憲治著 青山ライフ出版 (2025/3)



それでは、お寄せいただいた書評をご紹介します。


谷憲治医師(東洋病院1)・院長)は名西郡神山町の生まれで、徳島大学医学部医学科1982年3月のご卒業。私の1年先輩になる。学生の頃は柔道に励み(西医体の個人戦で優勝)、卒業後は本学の呼吸器・膠原病内科(旧第3内科)に入局した。その後、総合診療医学分野の特任教授となられ、医学科学生の地域医療実習のカリキュラムを作成し、私どもをご指導いただいた。

2023年に徳島大学を定年退任後に、ご自身の思春期の日記や箴言を紹介したのが本書である。前半では、中学3年から高校3年までの情緒不安定な頃や、人格形成、友人関係、異性、そして、その情緒不安定の克服、その後の成長が、この「思春期日記」より読み取れる。よくご自身の日記を保存していたものと感心する(自分の子孫たちにこんな血のつながった先祖が存在していたのだということを伝える記録として残しておきたい2)と)。高校2年で、北原白秋や、「愛と認識との出発(倉田百三)」や「愛の無常について(亀井勝一郎)」を読んでいたのを知った。

後半(「悩みの特効薬」)では、1)物事に動じない精神力を持つ、2)人間関係の悩み、3)人の目が気になる、4)情緒不安定、5)人に好かれる会話術、6)つらい現実からの逃避、7)立派な人格を持つ、8)死を恐れるという章に分け、金言や自分自身の思いを紹介している。三木清や中島敦、加藤諦三、ゲーテ、亀井勝一郎、河合隼雄、佐藤忠男、釈迦、松田道雄、ソロー、孔子などの言葉を引用している。他、尾関宗園や、鶴巻敏夫、本荘可宗、ボブ・コンクリン、古谷綱武は、私にとって本書で初めて知る人の言葉で参考になった。

谷先生のご趣味は、天体観察やSFの読書に加え、写真と聞く。モノクロで残念だが、表紙やカットの写真も秀逸である。結びに、この哲学書より、板野町出身で徳島弁を話すアンジェラ・アキの曲「手紙 ~拝啓 十五の君へ~」を思い浮かべた。歌詞には、「自分とは何でどこへ向かうべきか、問い続ければ見えてくる」とある。この本に、その答えのヒントがあると考える。

【参考URL】

1, 東洋病院(徳島市)⇒https://www.toyohosp.jp/

2, 谷憲治:念願だった2 冊の本の出版. 日本プライマリ・ケア連合学会 四国ブロック支部 ニュースレターNo.50(2025.06)

⇒https://www.primarycare-japan.com/assoc/wp-content/uploads/2025/06/5a575b6d0120d957a51e37be134b854e.pdf





本日(4/24)より、蔵本分館1階ホール、My Recommendationsコーナーに展示しております。ぜひ手に取ってご覧ください。


                                                                                     T.K.

2026年3月31日火曜日

My Recommendations No.196「高齢者とがん : 健康管理、診断・治療から心と暮らしのケアまで」

徳島大学名誉教授 吉本先生より、My Recommendationsコーナーに下記の図書をおすすめいただきました。

吉本先生、ありがとうございます。


高齢者とがん : 健康管理、診断・治療から心と暮らしのケアまで

山口建著 中央公論新社 (2026/1/22)


それでは、お寄せいただいた書評をご紹介します。


国立がんセンター研究所の先輩医師(私が腫瘍遺伝子研究部在籍時の内分泌部室長)で、後年に研究分野で共通点を有した山口建・静岡県立静岡がんセンター名誉総長による「がん患者のための啓発書」である。 がんと診断された時、どうしても不安に陥ってしまう。この状況を克服するためには、患者自身が「がん」と向き合い、必要な情報や支援を入手することが重要という。 特に、第4章 がんと心、第8章の「やるべきこと、やりたいこと、やれること」、「患者から学んだこと」、第11章 家族の役割と心構え など、著者による「がんの社会学」の研究結果や多くの患者と向き合った際の患者・家族の証言が示され、がん患者は身体のみならず心の弱者であることを再認識し、精神的にも支えとなる必要性を感じた。





  本日(3/31)より、蔵本分館1階ホール、My Recommendationsコーナーに展示しております。ぜひ手に取ってご覧ください。




                                                                                        YB

2026年1月26日月曜日

My Recommendations No.195「アレルギーの科学」

徳島大学名誉教授 吉本先生より、My Recommendationsコーナーに下記の図書をおすすめいただきました。

吉本先生、ありがとうございます。


アレルギーの科学 : なぜ起こるのか どうして増えているのか

森田英明,足立剛也編・著 講談社 (2025/10/23)


それでは、お寄せいただいた書評をご紹介します。


アトピー性皮膚炎、喘息、花粉症、食物アレルギーなどのアレルギー疾患は、国民の約5割が罹患する国民病であり、私も喘息に悩まされている。
アトピー性皮膚炎は、ダニや花粉などの特定のアレルゲンに対する獲得免疫と、皮膚の掻爬やストレスなどで起きる自然免疫の両方が関与し、Th2細胞から分泌されるIL-31が痒みを引き起こす。
喘息では、活性化された免疫細胞からIL-13が分泌され、増加した杯細胞より粘稠度の高い粘液が大量に産生されるとともに、気道上皮のバリア機能を低下させる。
花粉症においては、マスト細胞から分泌されるヒスタミンにより、くしゃみと鼻水が即時に生じ、6-10時間後には好酸球の関与や血管透過性の亢進により鼻づまりが起る。
本書では現在のアレルギーの病態・治療の最前線がわかりやすく記載されており、座右の書としてお勧めする。





 本日(1/26)より、蔵本分館1階ホール、My Recommendationsコーナーに展示しております。ぜひ手に取ってご覧ください。




                                                                                        YB

2025年11月27日木曜日

My Recommendations No.194「身近な薬物のはなし : タバコ・カフェイン・酒・くすり」

徳島大学名誉教授 吉本先生より、My Recommendationsコーナーに下記の図書をおすすめいただきました。

吉本先生、ありがとうございます。


身近な薬物のはなし : タバコ・カフェイン・酒・くすり

松本俊彦 著 岩波書店 (2025/3/17)


それでは、お寄せいただいた書評をご紹介します。


本書で最も心に刻まれたのは、コーヒー党である私にとってカフェインが強力な依存性薬物であることを再認識させられたことだ。 

人類に最も大きな健康被害をもたらしている薬物は「アルコール、タバコ、カフェイン」がビッグスリーで、深刻な問題を惹起していないにもかかわらず、厳しい規制の対象薬物が「アヘン(オピオイド類)、大麻、コカ」のリトルスリーだ。また、若年層で増えている市販薬(パブロンゴールドやエスエスブロン錠、メジコン咳止め錠等)のオーバードーズ(過量服薬) が社会問題となっている現実がある。 

アルコール度数が高くて安いストロング系チューハイはゴクゴク飲めて危険なこと、大麻規制のきっかけは禁酒法廃止に伴うアルコール捜査官の失業対策だったこと、市販薬には処方薬では使われなくなった依存性の強い成分が加えられていることなど、新たに得られる情報が満載だ。





  本日(11/27)より、蔵本分館1階ホール、My Recommendationsコーナーに展示しております。ぜひ手に取ってご覧ください。




                                                                                        YB

2025年10月17日金曜日

My Recommendations No.193「35歳の哲学者、遺伝性がんを生きる : それでも子どもを望むということ」

徳島大学名誉教授 吉本先生より、My Recommendationsコーナーに下記の図書をおすすめいただきました。

吉本先生、ありがとうございます。


35歳の哲学者、遺伝性がんを生きる : それでも子どもを望むということ

飯塚 理恵 [著] 幻冬舎 (2025/5/14)


それでは、お寄せいただいた書評をご紹介します。


不妊治療中に乳がんが見つかった32歳の哲学者が、遺伝性乳がん卵巣がん症候群の原因遺伝子であるBRCA2の病的変異を有することが判明した。このため右側乳がんの切除時に、左側乳房も予防的切除を受けた。 将来、子どもは欲しいが、できるだけ変異を受け継がない子どもが欲しいとの思いから、受精胚における特定の遺伝子変異の有無を調べるPGT-M(着床前胚遺伝子変異検査)を望んだが、国内では学会による厳しい要件があるため、考え抜いた末、海外でPGT-A(着床前胚染色体異数性検査、国内では2025年9月に高年齢の不妊症の夫婦にも適用する方針が示された)とともに本検査を受けた。 本書では、女性のリプダクティブ・ライツに対する未成熟さ、ネガティブな評価を含む命の「選別」と不妊治療の現場で実施されている胚の「選択」の違いなどの倫理的問題を、どう考えるべきかを我々に問いかけている。 遺伝性内分泌腫瘍を研究テーマとしてきた私にとって、「遺伝とがん」の抱える問題について再考させられた書である。




  本日(10/17)より、蔵本分館1階ホール、My Recommendationsコーナーに展示しております。ぜひ手に取ってご覧ください。




                                                                                        YB

2025年10月8日水曜日

My Recommendations No.192「緩和ケアをポジティブに変える本 : つらさを抱える患者にできることはもっとある」

徳島大学名誉教授 吉本先生より、My Recommendationsコーナーに下記の図書をおすすめいただきました。

吉本先生、ありがとうございます。


緩和ケアをポジティブに変える本 : つらさを抱える患者にできることはもっとある

廣橋猛 [著] 日経BP (2025/9/16)


それでは、お寄せいただいた書評をご紹介します。


甲状腺がんの手術を受けた著者は、緩和ケアを諦めでなくポジティブに変える必要性を強調している。がん治療終了後に緩和ケアを開始と誤解している治療医が多いのが問題で、早期から緩和ケアを開始すると患者の人生が確実に変わるという。 「ボヤのうちに消火」が鎮痛薬使用の鉄則、食事が難しい終末期にはガリガリ君がお勧め、エンシュアリキッドにブラックコーヒーや牛乳を混ぜると飲みやすい、吐き気の原因に応じて制吐薬を選択などが、緩和ケアや訪問診療の場において参考になる。 著者がカルテで最初に見るのは患者の住所欄で、患者の生活を想像する上で手がかりとなるという。全くの同意見で、住所を機に会話が広がることが多い。




  本日(10/8)より、蔵本分館1階ホール、My Recommendationsコーナーに展示しております。ぜひ手に取ってご覧ください。




                                                                                        YB

2025年9月19日金曜日

My Recommendations No.191「フィジカル大全 : 読んで、見て、聴いて、身体診察を完全マスター」

徳島大学名誉教授 吉本先生より、My Recommendationsコーナーに下記の図書をおすすめいただきました。

吉本先生、ありがとうございます。


フィジカル大全 : 読んで、見て、聴いて、身体診察を完全マスター

石井大太,徳田安春 [編集] 医学書院 (2025/6/16)


それでは、お寄せいただいた書評をご紹介します。


「聴診器を胸にあててくれたのは久しぶり」と患者さんから言われることが時にあり驚いてしまう。よく聞いてみると、内科外来の再診で触診、打診、聴診等を省略し、いつも問診だけで終了というのだ。 CT、MRIなどの検査機器が発達した現在でも、これらは常に利用可能とは限らない。先人たちが継承してきた知見を基に、五感を研ぎ澄まして身体診察から得られる情報を活用する必要がある。 身体所見の教科書として「サパイラ 身体診察のアートサイエンス」、「ベイツ診察法」や「Dr.ウィリス ベッドサイド診断」が有名だが、本書は画像がカラーでわかりやすく、動画も豊富なため、これらよりハードル低く通読できる。冷汗の機序にカテコラミンの関与など、ベテラン医師にとっても新しい知見を得ること受けあいだ。




  本日(9/19)より、蔵本分館1階ホール、My Recommendationsコーナーに展示しております。ぜひ手に取ってご覧ください。




                                                                                        YB

2025年6月17日火曜日

My Recommendations No.190「集中講義!おなかの身体診察 : フィジカル&腹診で腹部症状に立ち向かえ」

徳島大学名誉教授 吉本先生より、My Recommendationsコーナーに下記の図書をおすすめいただきました。

吉本先生、ありがとうございます。


集中講義!おなかの身体診察 : フィジカル&腹診で腹部症状に立ち向かえ

中野弘康 (著)医学書院 (2025/3/10)


それでは、お寄せいただいた書評をご紹介します。


腹痛患者に安易にCT検査、超音波をオーダーしていないだろうか。病歴とバイタルサインから疾患を想起した後、特異度の高い身体所見を見出すことが重要で、画像診断は診断確定のために実施することを勧めている。 例に挙げると、急性虫垂炎は、腹痛(内臓痛である心窩部痛)→食欲低下・嘔気→圧痛(右下腹部に限局する体性痛)→発熱→白血球上昇の順で起き、この順番が大切という。一方、機能性消化管障害などの慢性の腹痛には、漢方での腹診の導入が診断に重宝する。コラムも充実しており、「漢方の使い方―general appearanceと漢方」や「不定愁訴に隠れた貧血に介入する」が役に立つ。 本書においては、豊富な写真や動画を参考にしながら、身体所見のポイントや診察のコツが取得できる。


  本日(6/17)より、蔵本分館1階ホール、My Recommendationsコーナーに展示しております。ぜひ手に取ってご覧ください。



                                                                                        YB

2025年6月10日火曜日

My Recommendations No.189「診療ハック : 知って得する臨床スキル125」

徳島大学名誉教授 吉本先生より、My Recommendationsコーナーに下記の図書をおすすめいただきました。

吉本先生、ありがとうございます。


診療ハック : 知って得する臨床スキル125

矢吹拓編集 医学書院(2025/4/7)


それでは、お寄せいただいた書評をご紹介します。


毎日の診療に役立つ「臨床の知恵」が盛りだくさんで、目から鱗が落ちる項目が多い。

「咽頭後壁を見るときは息を吸ってもらう」、「ワクチンをゆっくり注入すると痛みを感じやすい」、「直腸内から便検体用のスワブで検体採取すれば、いつでも便培養検査が可能」、「鉄剤処方は1日半錠(クエン酸第一鉄ナトリウムは50mg/錠)で良い」などが印象に残る。

腸管から吸収できる鉄の量は1日7mg程度だ。1日15mg、50mg、150mg投与で、貧血の改善率は差を認めず、副作用の頻度は服用量が多い群ほど高かったという結果がある。1日半錠は効果発現・副作用回避のためにも良さそうだ。

このほか、コミュニケーションスキル項目も含まれており、臨床能力の涵養に役立つ。



  本日(6/10)より、蔵本分館1階ホール、My Recommendationsコーナーに展示しております。ぜひ手に取ってご覧ください。




                                                                                        YB

2025年4月17日木曜日

My Recommendations No.188「からだの「衰え」は口から : 歯と健康の科学 : 健康寿命を左右する口のケアの最前線」

徳島大学名誉教授 吉本先生より、My Recommendationsコーナーに下記の図書をおすすめいただきました。

吉本先生、ありがとうございます。


からだの「衰え」は口から : 歯と健康の科学 : 健康寿命を左右する口のケアの最前線

水口 俊介 (著) 講談社 (2025/2/20)


それでは、お寄せいただいた書評をご紹介します。


口を大切にしていないと要介護となり、場合によっては命に関わるのだ。

「口腔の機能の健常な状態」と「口腔の機能低下」との境界域であるオーラルフレイルの新定義が示され、この場合は早期に気づいて適切な対応が必要だ。

さらに、口腔衛生状態不良、口腔乾燥、咬合力低下、舌口唇運動機能低下、低舌圧、咀嚼機能低下、嚥下機能低下のうち3項目以上あれば、新しい病名である「口腔機能低下症」と診断される。それぞれの項目の評価法が詳しく解説されている。

このほか、口腔ケアによる高齢者の肺炎予防、糖尿病と歯周病の関連、歯の欠損放置の危険性、理想的な噛み合せ、義歯の手入れ法、義歯安定剤使用時の注意点、義歯さえ入れれば栄養状態が上がるのではなく栄養指導が必要なことなどが示され、見逃されがちな口腔機能の重要性を再認識させてくれる。




  本日(4/17)より、蔵本分館1階ホール、My Recommendationsコーナーに展示しております。ぜひ手に取ってご覧ください。


                                                                                        YB


2025年4月14日月曜日

My Recommendations No.187「その医療情報は本当か」

徳島大学名誉教授 吉本先生より、My Recommendationsコーナーに下記の図書をおすすめいただきました。

吉本先生、ありがとうございます。


その医療情報は本当か

田近 亜蘭 (著) 集英社 (2024/10/17)


それでは、お寄せいただいた書評をご紹介します。


新型コロナウイルス感染症流行初期では、種々のメディアにより玉石混交の情報が示され、適切な情報の見極めが困難なことを経験した。また高血圧の基準が緩和されたとSNS等で拡散され、信じている患者も少なからず存在した。

健康を維持促進するために、情報にアクセスし理解・活用するための能力が、欧米と比べて日本人は低いという調査結果がある。情報を受動的に受け取る姿勢が強いためだ。情報を鵜呑みにせず、科学に裏付けされた信頼できる情報を選び取ることが大切だ。

さらに、美容注射などの医療広告の不適切例、トラブルに関する公的相談機関の紹介、健康食品やサプリメントの情報の見極め方なども示されており参考になる。

 


本日(4/14)より、蔵本分館1階ホール、My Recommendationsコーナーに展示しております。ぜひ手に取ってご覧ください。

                                                                                        YB

2025年2月7日金曜日

My Recommendations No.186「ベイズ流医療統計 : 結局ベイズって何ができるの?」

新潟医療福祉大学准教授・徳島大学歯学部歯学科卒業生(第7期生) 井上弘樹先生から著書を寄贈いただき、コメントもお寄せくださいました。

井上先生、ありがとうございます。


ベイズ流医療統計 : 結局ベイズって何ができるの?

井上弘樹(著) 診断と治療社 (2024/10/11)


では早速、コメントをご紹介します。


医療分野向けの、より実践的なベイズ統計の解説書です。特に難解なマルコフ連鎖モンテカルロ法の原理を従来にない平易な言葉で説明し、「なるほど、そうだったのか!」と納得の内容になっています。さらに、近年注目される最新のベイズ流アダプティブデザインにも踏み込み、臨床試験の柔軟な設計手法を紹介しています。「ベイズ流統計解析を用いた論文を読みたい」「モデリングに挑戦したい」…でもベイズ統計の既存の入門書では物足りず、と言って高度な専門書にはハードルを感じる…そんな臨床家や大学院生にとって待望の一冊です。





  本日(2/7)より、蔵本分館1階ホール、My Recommendationsコーナーに展示しております。ぜひ手に取ってご覧ください。

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2025年1月24日金曜日

My Recommendations No.185「透析を止めた日」

徳島大学名誉教授 吉本先生より、My Recommendationsコーナーに下記の図書をおすすめいただきました。

吉本先生、ありがとうございます。


透析を止めた日

堀川惠子 (著) 講談社 (2024/11/14)


それでは、お寄せいただいた書評をご紹介します。


血液透析から高齢の母親をドナーとする腎移植、さらに再透析への移行の過程や、終末期での腹水や足先痛による苦しみなど過酷な闘病生活が詳細に描かれている。「透析を維持できなくなった時、どう死ねばよいのか分からなかった」とは患者の妻である著者の弁だ。

東京都・公立福生病院で起きた事件の詳細、透析を離脱した患者の死は悲惨だが「緩和ケア」は受けられないこと、3%に過ぎない腹膜透析は死亡直前まで持続できる方法だが普及しない理由など、後半部分では透析をめぐる医療システムの問題点が詳らかにされている。

「信頼できるドクターと呼べる存在には、一度も巡り会うことが叶わなかった」と記されている。反面教師として学び、自分への戒めと捉えたい。




  本日(1/24)より、蔵本分館1階ホール、My Recommendationsコーナーに展示しております。ぜひ手に取ってご覧ください。

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2024年11月14日木曜日

My Recommendations No.184「「腸と脳」の科学 : 脳と体を整える、腸の知られざるはたらき」

徳島大学名誉教授 吉本先生より、My Recommendationsコーナーに下記の図書をおすすめいただきました。

吉本先生、ありがとうございます。


「腸と脳」の科学 : 脳と体を整える、腸の知られざるはたらき

坪井 貴司 (著) 講談社 (2024/9/19)


それでは、お寄せいただいた書評をご紹介します。


ストレスなどが原因で、便秘や下痢、腹痛が慢性化する過敏性腸症候群は、腸と脳との相互作用がもたらす病気の代表例だ。過敏性腸症候群では、視床下部から分泌される副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモンの影響で腸管の求心性迷走神経が過敏となり、わずかなストレスで便通異常が起こると考えられている。

また、500〜1000種類・約40兆個の細菌からなる腸内常在微生物叢が産生する長鎖脂肪酸を腸内分泌細胞が感受し、その結果分泌された消化管ホルモンであるGLP-1が求心性迷走神経を刺激し、その情報を延髄の孤束核に伝えて食欲が抑制されるのだ。

さらに、認知能力の高さと特定の細菌の多さや腸内常在微生物叢の組成の多様性に相関関係があることや腸内マイクロバイオータの多様性が睡眠の質に重要であることが示唆されているとのことだ。

この他にも人工甘味料が腸内細菌に影響を与え耐糖能異常を惹起するとの知見など、最新の知見がわかりやすく解説され、興味がかき立てられる。



本日(11/14)より、蔵本分館1階ホール、My Recommendationsコーナーに展示しております。ぜひ手に取ってご覧ください。

                                                                                        YB