徳島大学医学部臨床教授・美波病院院長 本田壮一先生より、My Recommendationsコーナーに下記の図書をおすすめいただきました。
本田先生、ありがとうございます。
三十一文字のドラマ : 和歌に生きた人たち
谷知子著 淡交社(2026/1)
それでは、お寄せいただいた書評をご紹介します。
版を重ねている角川ソフィア文庫「百人一首(全)ビギナーズ・クラシックス 日本の古典」(2010年)の著者、谷知子教授(フェリス女学院大学)1の近刊を紹介する。谷さんは、名西郡神山町のご出身。お世話になっている谷憲治院長(東洋病院)の妹さんで交流がある。
私どもは、第58回全国国保地域医療学会(沖津修 学会長。学会のテーマは、「地域包括ケアで日本の未来を切りひらこう~海・山・川の恵みの阿波の国での実践~」。)を、徳島市で開催した(2018年10月)。そのときの特別講演に、谷さんに「古典のすすめ、そして阿波の国」の題目でお願いし、好評を博した2。ご専門の中世和歌を中心に、「病」・「老い」・「死」の人生観や美意識を解説いただいた。
短歌・俳句は日本独自の文化である。五七五七七の音律の歌を、古今和歌集の頃から「和歌」と呼び、現代は「短歌」と呼ばれることが多い。本書では、古事記の「あなにやし、えをとめを(まあ、なんていい女だろう)」から、坂本竜馬の「世の人はわれをなにとも言はば言へわがなすことはわれのみぞ知る」まで、20の歌人(グループも)の和歌と現代語訳、そしてわかりやすい時代背景を含めた解説がなされている。百人一首で有名な持統天皇や、柿本人麻呂、大伴家持、小野小町、在原業平、菅原道真、紀貫之、和泉式部、紫式部、藤原俊成、西行、藤原定家、源実朝、後鳥羽院などの「推し」の和歌やその歴史背景も興味深く読める。一方、京都の葵祭につながる斎院だった式子内親王や、永福門院、後水尾天皇の和歌も学べた。さらに、良寛(江戸時代後期の僧侶)や、幕末の志士(佐久間象山や吉田松陰、龍馬)の章からは、往時は和歌が必須の教養だったと理解した。
私どもの医学部の学生時代(1977年から83年)は、1・2年は教養部(常三島キャンパス)にて、語学(英語・ドイツ語)や日本文学、歴史などを学ぶ機会があった。現在は、専門教育で学ぶことが増え、大学入学後に日本文学や外国文学に親しむ時期がないのを憂う。臨床現場で患者さんと語るときや、自分の将来を考えるときに文学の素養は、とても役立つ。平易な解説や現代語訳は読みやすく、千年を越える日本の和歌の入門書として本書を推薦したい。
【参考URL、図書】
1 谷知子(フェリス女学院大学)
⇒https://www.ferris.ac.jp/academics/teachers/japanese-literature07.html
2 谷知子:古典のすすめ , 角川選書 , 2017





