さっそくご紹介します。
イヌを飼って十数年になるが、ネコを飼っているのはこの2年である。家に帰るとイヌは玄関に迎えにくるが、ネコは知らん顔で、どうもイヌとネコとは人間への関わり方が違うと感じていた時に出会った本である。イヌは飼い主を群れのリーダーとみなし、家庭内での空気を読み取りながら、それに合わせた行動ができるが、ネコは人間を仲間として意識したり、従属することはないというのが定説のようである。
著者(現在は北九州市立自然史・歴史博物館の学芸員)が九州大学理学部の大学院生時代に行った福岡県の相の島での7年間のノラネコに関するフィールドワークをもとに、「ネコの秘密」を書いた本である。島にすむ200匹のノラネコ全部を個体識別し、名前をつけて観察・追跡した。ネコの体重を測定する工夫や発情期の観察はおもしろい。若いメスより出産・育児経験の豊富なメスのほうがもてること、発情メスをめぐりオスたちが輪を形成して求愛すること、メスがダッシュして発情の輪から離れてグループ外の遠征オスとも交尾すること、ノラネコは子ネコ5匹を産んで、1年生きのびるのは1匹のみ、それも平均寿命は3~5年(飼いネコの3分の1)という厳しい環境に置かれていることなど、ネコの生態が観察結果をもとに描かれている。
この他、1万年に及ぶネコと人間との歴史、ネコの「しなやかさ」、「優美さ」、「美しさ」など我々がネコに感じる魅力は獲物を瞬殺するために進化した結果の副産物であること、ハンティング時、爆発的な瞬発力を発揮する反面、持続力に欠けるのは白筋が多いという理由によること、15センチより近いものはよく見えず、赤色は見えないこと、ヒトでは聞き取れない高い音を聞けること、甘みには敏感でないこと、イヌと異なり前足を横方向に自由に動かせる運動能力があり、ネコパンチをくり出したり木に抱きついて登れること、イヌと比べて食餌のタンパク質要求量の高いことなど、新たに知り得た事項が多い。このように、本書においては、動物学、生態学や遺伝学の見地から「ネコの生き方」が科学的に解き明かされている。
最近、「猫的感覚: 動物行動学が教えるネコの心理」(ジョン ブラッドショー著、早川書房)や「ネコ学入門: 猫言語・幼猫体験・尿スプレー」(クレア ベサント著、築地書館)も出版されている。ネコの秘密に迫りたい人には、合わせて読んでみることを勧める。
書評内で紹介されている2冊も含め注文中でしたが,今日「ネコ学入門: 猫言語・幼猫体験・尿スプレー」が入荷されたので一足先に展示を始めました。
ネコに興味がある方必見です!
展示コーナーでは,吉本先生が飼っておられる,きたろうくん(茶色)とマロンちゃん(白色)の写真も見られます。可愛い猫ちゃんの写真で癒されたい方,ぜひ見に来てくださいね。
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