本田先生,いつもありがとうございます。
『七帝(ななてい)柔道記』
(増田俊也著 / 角川書店)
早速,お寄せくださいました書評をご紹介しますね。
2016年8月6日から21日に、西医体(第68回 西日本医科学生総合体育大会)1)が徳島大学の主管で開催される。本学からは、全医体2連覇中のサッカー部や柔道部の活躍が期待される。
徳島大学病院の和泉唯信先生(神経内科)は、本学医学部の卒業だが、その前に北海道大学理学部で学び、柔道の猛者であった。先生の2年後輩の増田俊也2)による自伝小説が本書で、和泉先生にいただいたのを再読したので紹介する。
寝技中心の北大、東北大、東大、名古屋大、京大、阪大、九大の旧帝国大学7大学で現在も行われている「七帝(ななてい)柔道」を題材に、古き大学の風景が描かれている。
井上靖(旧制第四高等学校)には、「しろばんば」、「夏草冬涛(なつくさふゆなみ)」の続編に、「北の海」という小説があり、「体格や才能がものをいう立技と違い、寝技は練習量がすべてを決定する柔道」、「白帯でも、体格が小さくても、才能がなくても、寝技なら練習量を増やせば必ず強くなれる」と書かれている。
北大は、選手の小型化が進み、部員も少なくなり、七帝戦で連続最下位を続けている弱小チームだった。他の大学から馬鹿にされ、学内の他の体育会クラブからもさげすまれ、廃部説さえ流れる中で、部員たちは必死に突破口を見出そうと、練習量を極限まで増やしていった。
道警(北海道警察)の特練柔道部(全日本選手権やオリンピックを目指している柔道界のエリート集団)への連日の出稽古、ウェイトトレーニングコーチによる容赦のないハードトレーニング、そして普段の寝技乱取りで先輩たちに絞め落とされ、抑え込まれ、涙と鼻水を流しながら向かっていく。それでも突破口が見えてこず、七帝戦で連戦連敗、部員たちは苦しみ続ける。
柔道の練習場面だけではなく、昔からの伝統行事などで若者らしい楽しさも少しあるが、普段の部員たちは泣いてばかりいる。俺たちは一向に強くなれないと泣き、試合後にも負けて泣く。「なぜ北大まで来て、将来柔道で食っていくわけでもないのに、こんなに苦しい練習をしなければならないのか」と。
個性ある先輩、同期、後輩たちに囲まれて北国の札幌で学生生活を送る北大柔道部員たちの青春。春に若葉が萌える巨木、秋の紅葉、積雪が1メートルを超える地吹雪の中を、旅行やデートで青春を謳歌する学生たちを横目に、ただただ苦しい寝技の練習を繰り返す。深い雪に閉ざされた札幌の街で、友情が芽生え、恋愛をし、少年だった新入部員たちは青年へと成長していく。
漫画化もされているが、是非原作を楽しんでほしい。東京大学の佐田政隆先生(本学循環器内科)の若き姿が登場するのも、興味深い。
【参考】1)第68回 西日本医科学生総合体育大会
⇒http://plaza.umin.ac.jp/~nisiitai/68th/
2)増田俊也ブログ
今回,『七帝(ななてい)柔道記』をMy Recommendationsコーナーで紹介するのに先立ちまして,作品に登場される和泉唯信先生,佐田政隆先生に,その旨お知らせしましたところ,お二人ともご快諾くださいました。
先生方の学生時代の様子を,小説で垣間見ることができるなんて貴重ですよね。
とても読み応えのある本ですので,ぜひ手に取ってご覧ください!
sm