「死ぬまでに学びたい5つの物理学」(山口栄一 / 筑摩書房)です。
それでは書評をご紹介します。
自然科学の分野で、蔵本地区の基盤である生命科学と対極に位置する物理学を5つの革命的な理論に絞って、それを生み出した5人の人間ドラマと絡ませながら、思考プロセスはどういうものかを論じたものである。
ここでの5人とは、万有引力の法則を発見したニュートン、統計力学の端緒を開いたボルツマン、エネルギー量子仮説を立てたプランク、相対性理論を打ち立てたアインシュタイン、量子力学の確立に貢献したハイゼンベルクである。
元エール大学医学部長のルイス・トマスは「医学は最年少の科学」といったそうだが、生命科学も数学、物理学に比べれば、その成熟度は低い。しかし、分子生物学の時代になり、物理学、数学も避けては通れない。しかし、本書は、物理学を単に道具として解説しているのではなく、科学はいかにして創られてきたかを「創発」、「回遊」という言葉を使って自説を展開している。末尾には山中伸弥先生のiPS細胞の発見にも言及している。
実験、実験でデータをかき集める生命科学を目指している人にとっても、物理・数学が好きな人にとっても、学生教育はどうあるべきかを考えている人にとっても興味深い書であると思う。
こちらも今日から展示しています。ぜひ1階ロビーへお立ち寄りください。
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