1月末の歯科医師国家試験に続き,明日から医師国家試験が始まります。ここ数日,6年生の皆さんが図書館でいつにもまして熱心に勉強している姿を何度も目にしました。
体調に気を付けて,頑張ってきてください。
さて,今日は「原著論文」について考えてみたいと思います。図書館では「論文」「文献」は身近な存在です。
文献検索講習会を行いますし,当ブログでも,しばしば「論文」「文献」という単語が登場します。
そして,その「論文」の前に「原著」が付く場合があります。
例えば,医中誌Webでは原著論文で文献の絞込ができますね。
この「原著論文」って一体なんでしょう? 何か決まった定義があるのでしょうか?
実は,論文の種類については,統一された定義が定められているわけではありません。
様々な辞書を横断検索できるデータベースである「JapanKnowledge Lib」で「論文」を検索すると
1 論議する文。筋道を立てて述べた文。
2 学術的な研究の結果などを述べた文章。「博士―」
"ろん‐ぶん【論文】", デジタル大辞泉, JapanKnowledge, http://japanknowledge.com, (参照 2016-01-15)
となっており,論文の種類については述べられていません。また,残念ながら「原著論文」で検索してもヒットしません。
「原著論文」がどのようなものであるかは,雑誌の編集方針によって,論文を検索するデータベースによって定義が異なってきます。また,研究者の方が業績(この場合,今まで発表した論文のことですね)を提出する必要がある場合,その提出先で「原著論文の定義」が決められていることもあります。
例えば,日本心理学会の雑誌「心理学研究」では論文の種類を「原著論文」「研究資料」「研究報告」「展望論文」と定義し,原著論文を「原則として,問題提起と実験,調査,事例などに基づく研究成果,理論的考察と明確な結論をそなえた研究。」と規定しています。
( 学会のWebページ「機関誌掲載論文の種類追加について」を2016/2/5に参照。)
イメージとしては,「ある問題について新しい知見を得るために研究し,その結果について考察し,結論を出したもの」といったところでしょうか(あくまで職員KYのぼんやりしたイメージです)。
生物医学雑誌の場合,抄録(論文の要約ですね)を「構造化抄録」といって「目的」「研究デザイン」「研究対象」「介入(治療など)」「結果」「結論」などの項目で構成するよう規定されていることも多くなっています。
さて,医中誌Webではどう定義されているでしょう。
医中誌Webを作成している医学中央雑誌刊行会のWebページ「編集方針に関するお知らせ」には「論文種類の定義」という項目があり,論文は「原著論文」「会議録」「座談会」「図説」「講義」「解説」「総説」「一般」「Q&A」「レター」「症例検討会」「コメント」に分類されているそうです。
「多い!」と思った方もいらっしゃるかもしれません。
そして原著論文は
「医学・歯学・薬学・看護学・獣医学およびその関連分野に関わる研究、開発、調査で、独創性、新規性のある文献で、著者名と所属機関名が必ず記載されており、目的、対象、方法、結果、考察、結論で構成されているもの。図、表、写真、参考文献を含み、要旨、要約があるもの。講演または会議録でも、原著的内容、形式を有するもの。論文の簡略化された形式をとった記事(速報・短報)も含む。症例報告は原著論文とする。」
と規定されています。
最初の二文は,これまで考えてきた「原著論文」のイメージにあっている気がします。その後の「講演または」以降の部分については,職員KYは少し意外な印象を受けました。
「原著論文」で絞込をした検索結果については,このようなものも含まれるということを知っておくと良いかもしれません。
また,このWebページでは,医中誌Webにおける「解説」と「総説」についても詳しく説明されていますので,興味のある方はご覧くださいね。
(KY)