吉本先生,ありがとうございました。
「下半身動かぬセラピー犬 シャネル ~緩和ケア病棟の天使たち~」
(青木健, 国見祐治, 長尾和宏 / ブックマン社)
「長尾和宏の死の授業」
(長尾和宏 / ブックマン社)
「死の体験授業」
(山崎章郎 / サンマーク出版)
書評をお寄せくださいましたので,早速ご紹介します。
我が家の愛犬ラブ(ラブラドール・レトリバーと日本犬のミックス)が徐々に右後足が麻痺して動けなくなり、本年4月の初め(16歳)天国へと旅立った。幼犬から成犬、老犬の時代を3人の子供の成長とともに過ごしたので思い出が多い。毎朝散歩に出かけていたラブの不在に寂しさを感じていた時、この本に出会った。本フォトエッセーは、犬たちと患者さん、医療関係者らの交流を写真に収めたもので、写真に添えられた文章が心を打つ。
名古屋掖済会病院緩和ケア病棟において、激務で疲弊している看護師の癒やしのためにという名目で実現したアニマルセラピーに、月一回訪れ人気者となっていたシャネルという名の雌のゴールデン・レトリバーがいた。シャネルは、具合の悪い患者さんの個室を訪問して添い寝するなど、自分が求められている場所を察する力を持っていた。ところが、下半身が麻痺して歩けなくなった。看護師さんの助言による床ずれの対処後、なんとかセラピーに復帰でき、時には犬専用の車椅子を用いて病院の中庭を嬉しそうに走った。麻痺の際、獣医師から安楽死を提案されたことがある。このようなシャネルを含む殺処分されるはずだった犬たちが、がん患者さんに多くの笑顔や癒しをもたらしたに違いない。一方、セラピー犬となることで、人から愛され、犬たち自身も癒やされていることだろう。
下垂体後葉から分泌されるオキシトシンは母乳分泌を促すことが知られているが、最近、母子間や雌雄間の絆形成において重要な役割を担うことが明らかにされ「愛情ホルモン」、「癒しホルモン」とも呼ばれている。本年4月に、麻布大学などの研究グループは、犬と人間が互いの目を見つめ合うことで、双方にオキシトシンの分泌が促進されることを発表した(Science, 348:333-336, 2015)。この所見はドッグセラピーの有用性を裏付けるものである。
日常から死を意識するものは排除されていることや、自身が中年以降になるまで、身内の死を体験したことのない人が増えているため、医療関係者も家族も「死」を自分のこととして捉えられない。若い人でも「死」は必ず訪れるものなのに、自分は関係ないと思っていないだろうか?今後、社会保障費の拡大への対応に伴い、「どう生きるか」だけでなく「どう死ぬか」について自己決定しなければならない時代を迎えざるを得ない。緩和ケアでの情報を得る機会に、「生と死」について考えてみよう。「長尾和宏の死の授業」長尾和宏著(ブックマン社)および「死の体験授業」山崎章郎著(サンマーク出版)を一読することを勧める。
3冊のうちNo.56「長尾和宏の死の授業」が一足早くご用意できましたので,本日より蔵本分館1階のMy Recommendationsコーナーに展示しています。
ぜひ手に取ってご覧ください!
No.55「下半身動かぬセラピー犬 シャネル ~緩和ケア病棟の天使たち~」とNo.57 「死の体験授業」 も到着次第コーナーに展示予定です。もうしばらくお待ちくださいね。
sm