2015年11月12日木曜日

「エビデンスに基づく医療を実践するEBMワークショップ」を開催しました

蔵本分館では、去る10月25日(日)に倉敷中央病院救命救急センター長の福岡敏雄先生を講師としてお迎えし,「エビデンスに基づく医療を実践するEBMワークショップ」を開催しました。
医・歯・薬の各学部から学部学生や院生の方,医歯薬学研究部や病院の先生方など幅広い分野から25名にご参加いただきました。
ありがとうございました。

蔵本地区の皆さんでしたら「EBM」という言葉は耳にすることがあるかと思います。
EBMはEvidence-Based Medicineの頭文字を取ったもので“根拠(エビデンス)に基づく医療”と訳されていますね。このワークショップではEBMのステップに沿って臨床研究論文の内容を評価し,臨床場面への適用についてグループで考えます。

・・・といってもイメージが湧きにくいかもしれませんね。少し具体的な流れを紹介します。
まず,具体的な事例(シナリオ)を事前に福岡先生が用意して下さいます。
今回のシナリオはこんな感じでした。

「あなたは、ある病院の内科医である。32才の男性が、2日間の咳と発熱を主訴に救急外来を受診してきた。
(中略)
気管支炎と診断し、通常の消炎鎮痛剤と去痰薬を処方したが、患者さんから「抗生物質を頂けますか」と声をかけられた。・・・」


この後どうなるんでしょう。どうするのがいいのでしょう。抗生物質を出す・出さないにあたり根拠はありますか?どんなことに注意しますか?患者さんにはどのように説明しますか?

シナリオでは「電子教科書を調べてみると、あまり効果がはっきりしていないようだった。もう少し詳しく調べるために、引用文献であった新しいランダム化比較試験とコクランレビューを入手し内容を確認した。」と続きます。
この「引用文献であった新しいランダム化比較試験とコクランレビュー」の内容を,グループワークで評価します。そして,シナリオの患者さんにどう対応するのかまでを話し合います。

もちろん,何の基礎知識もなく突然論文を読んでも,評価するどころか内容の理解も難しいかもしれません。
そこで,グループワークの前にはEBMを実践するためのステップや,論文を選ぶポイント読むポイントについて詳しい説明があります。さらに!研究結果を理解するために「これだけ分かれば大丈夫」な統計知識も教えてもらえます。

また,京都府立医科大学附属図書館の山下ユミさん(PubMedの検索が非常によく分かる本「図解 PubMedの使い方」の著者の方です)には, 臨床情報を検索する際によく使われるデータベースであるUpToDate, Cochrane Library, PubMedの特徴や基本的な検索方法について,短い時間でしたがポイントを押さえた実習形式の講義もしていただきました。

知識を得て臨んだグループワークでは,症例シナリオをもとに論文の質をチェックポイントに沿って吟味し,患者さんに適応できるかを考えるという課題にグループで取りくみました。実際に論文を読むとなると大変な部分もたくさんあったかと思いますが,全国各地から来てくださった経験豊富なチューターの方々のご協力もあり,皆さん熱心にディスカッションに参加していました。各グループの発表も参加者全員が熱心に聞き入り,それぞれが自分たちの結論と照らし合わせ,考えているようでした。

最後に,2人1組で医師役と患者役になりシナリオのロールプレイを行いました。
参加者の皆さんは「患者さんはこんなことを心配しているのではないか」「こんな風に患者さんに説明をしてみたらどうだろうか」など,それぞれが新しく気づいたことや考えたことを反映させていました。グループワークでは難しい顔をしていた方からもロールプレイでは笑いが起き,和やかな雰囲気でした。
参加者の皆様,お疲れ様でした。
そして,福岡先生,チューターの皆様,ありがとうございました。

なお,このワークショップは,学長裁量経費(平成27年度パイロット事業支援プログラム・教育改革支援事業)によるもので,エビデンスに基づいた医療を実践することの重要性を学び,より質の高い医療情報を取り扱える人材の育成を支援するため,附属図書館が企画・主催し,医歯薬学研究部医療教育開発センター,医学部・歯学部・薬学部の各教務委員会,医科学・栄養生命科学・保健 科学教育部の各教育・研究委員会,口腔科学教育部教務委員会,薬科学教育部学務委員会,病院キャリア形成支援センター等関係部局の協力により行われました。

ご協力いただきました皆様にこの場をお借りして心よりお礼申し上げます。

関連記事:「エビデンスに基づく医療を実践するEBMワークショップ」学生さんから感想文をいただきました(2015/11/13)
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