2014年4月17日木曜日

My Recommendations No.5 「四大公害病」

4月より徳島大学附属図書館副館長に就任された
大学院HBS研究部 分子薬理学分野教授吉本勝彦先生が、
推薦図書「四大公害病」(政野淳子著)について書評を書いてくださりました。
吉本先生、ご協力ありがとうございました。


 社会科で誰もが習う公害。四大公害病は何かと問われて、「水俣病」、「新潟水俣病」、「イタイイタイ病」、「四日市公害」を即座に答えることができるだろうか。これらは戦後の高度経済成長期に、深刻な被害を発生させ、原因の究明に困難を極め、被害患者の救済、訴訟という共通の経過をたどっている。これらを過ぎ去った歴史上の病気として捉えていないだろうか。
しかしながら、水俣病・新潟水俣病においては、未だに未認定患者による損害賠償を求めた訴訟が行われており、本年3月に環境省から水俣病の認定基準が示されたが問題点が多いとされている。また、イタイイタイ病においては、201312月に原因企業と被害者団体側が患者救済策などで合意が得られたばかりである。
 本書は、四大公害ひとつひとつをまとめてあり、特に水俣病と新潟水俣病の関連はわかりやすい。水俣病に関しては多くの書があるが、最近では、水俣病研究の第一人者で、2012年に死亡した原田正純医師に焦点をあてた「対話集 原田正純の遺言」朝日新聞西部本社編集 岩波書店、原田正純の道 水俣病と闘い続けた医師の生涯佐高信著 毎日新聞社が発刊されており、参考にして頂きたい。骨と筋肉が痛み縮むイタイイタイ病に関しては、鉱山で亜鉛と鉛を採取した際に含有されているカドミウムによる尿細管障害、その結果生じる骨軟化症とカルシウム摂取不足が誘因となることが判明するのに20年を要していること、この原因解明に開業医萩野昇医師の貢献が大きいことが示されている。
 これらの公害病は、国・企業と被害者・支援者(医師・研究者を含む)間の長期間のせめぎ合いの結果、原因の解明に至った。医療系学生は特に病因解明に至る過程を学びとって欲しい。



ここで、さっそく読みたいと思われた方には大変申し訳ないのですが、本書は現在入荷待ちの状態で、蔵本分館ですぐに借りることはできません。 ただ、常三島の本館では所蔵していますので、取り寄せることが可能です。
ご希望の方はカウンターまでお申し出ください。
蔵本分館でも、入荷でき次第ご案内します。