2016年7月27日水曜日

My Recommendations No.78「免疫が挑むがんと難病 : 現代免疫物語beyond」

附属図書館長の吉本勝彦先生(分子薬理学分野教授)より,もう1冊図書をおすすめいただいておりましたので,ご紹介します。
『免疫が挑むがんと難病 : 現代免疫物語beyond 』
(岸本忠三, 中嶋彰著 / 講談社) 


お寄せいただいた書評がこちらです。↓

「医科免疫学」(1976年初版、菊地浩吉等共著、南江堂:B5サイズで赤色の表紙であったことを記憶している)が、40年前の学生時代の免疫学の教科書であった。菊地浩吉先生は、免疫によるがん細胞破壊が、Tリンパ球を主とする多種の免疫細胞およびサイトカインによって起こることを示した病理学者であるが、これまでのサイトカイン療法、抗腫瘍モノクローナル抗体、がんワクチン、抗腫瘍リンパ球を用いた養子免疫療法などのがん免疫療法は、腫瘍を縮小させる効果は期待できなかった。
ところが、免疫のブレーキを解除する抗CTLA-4抗体、抗PD-1/PD-L1抗体などの免疫療法は進行がんに対しても効果があることが明らかになり、がん治療のパラダイムシフトを起こすまでになった。
  本書では、稲葉カヨ先生とノーベル生理学・医学賞受賞者であるラルフ・スタインマン先生による「樹状細胞が抗原提示細胞であることの証明・樹状細胞ワクチン」、坂口志文先生による「論文が長く無視されたにもかかわらず、地道に約30年もの歳月をかけて、免疫の暴走を防ぐブレーキ役である制御性T細胞の発見」、上田龍三先生による「制御性T細胞制御薬である抗CCR4抗体による成人T細胞白血病の治療」、本庶佑先生・湊長博先生による「免疫チェックポイント分子であるPD−1の発見と抗体医療への応用」、「キメラ抗原受容体遺伝子導入T細胞による白血病治療とその副作用であるサイトカイン・ストームの抗IL−6受容体抗体(岸本忠三先生が開発)による制御」など、日本人研究者による免疫学研究の成果が紹介されている。登場している研究者から、次のノーベル賞受賞者がでても不思議ではないほどのすばらしい成果である。
 本書は、わかりやすい図や解説のコラムの挿入などにより、医療系の学生や他領域の研究者にとって理解しやすい点のみならず、まさに免疫学研究の最前線を実感できるお勧めの本である。

免疫研究の最前線を分かりやすく,しかも楽しみながら読めるのはブルーバックスならでは,ですよね。
蔵本分館1階ホール,My Recommendationsコーナーに展示していますので,ぜひご覧ください!



sm