2017年9月13日水曜日

My Recommendations No.105「セレンゲティ・ルール : 生命はいかに調節されるか」

分子薬理学分野教授 吉本勝彦先生ご推薦の図書が届きました。
先生のコメントをご紹介します。

『セレンゲティ・ルール―生命はいかに調節されるか』
ショーン・B. キャロル (著) / 紀伊國屋書店

東アフリカにあるセレンゲティは、我々の祖先の本拠であるとともに、大型哺乳類が集中して生息し、地上を多数の動物達が移動するという地球上で最後に残された地域の一つだ。
「さまざまな種類の分子や細胞の数を調節する分子レベルのルールが存在するのと同じように、一定の区域で生息可能な動植物の種類や個体数を調節するルールが存在する」この生態系レベルのルールを著者は「セレンゲティ・ルール」と呼んでいる。
本書では、
1)生物学や医学の発展に多大なる功績を残した人物たち(ウォルター・キャノン、チャールズ・エルトン、ジャック・モノーなど)の科学的発見に至るまでのエピソードと
2)海岸における生態系(ラッコはウニの個体数を抑制することで大型の海藻の成長を誘引)およびセレンゲティ国立公園における生態系(牛疫ウイルスの除去とヌーの爆発的な増加が栄養カスケードには働きかけ、ライオンなどの捕食者、樹木、キリンなどの個体数の増加)の調節が論じられ、著者はこれらの調節は生命の基本をなすメカニズムである「二重否定論理(AはBを抑制し、BはCを抑制する。すなわちAは二重否定を通じてCの増加を促進する)」に基づくことをあぶり出している。
いずれも数々のエピソードから理論的な話へと展開されており理解しやすい。
一読をお勧めする。 


上の写真の背景に写っている「がん-4000年の歴史-上・下」早川書房の著者
シッダールタ・ムカジーさんもこの本を推薦してくださっていました。(帯に)
今回のMy Recommendationsコメントのポップ作成時に、その帯もラミネートする予定でしたが、本体を壊してしまいました。ごめんなさい。
でも形あるものは、いずれ壊れるのです。
これも調節されている?いやいや違いますね。
                                      G