本田先生,いつもありがとうございます。
『再生に挑む : 経営効率化と医療再編を求められている自治体病院改革の現場から』
(三村經夫, 富田一栄著 / ルネッサンス・アイ)
では早速,お寄せいただいた書評をご紹介しますね。
徳島県内には、徳島大学の附属病院(徳島大学病院)や、地方公共団体による県立病院、市民病院、町立病院などの公立病院、日本赤十字社、JA厚生連、独立行政法人、日本郵政(4月より徳島逓信病院は民間に)などによる公的病院、そして民間病院がある。私は出身地の町立病院に勤務し、4月からは12年目の勤務に入る。
県内だけでなく、全国の公立病院は、地方行政の財政難、人口(患者)減少、医師偏在、疾病構造の変化による医療ニーズの変化、マネージメント不足など共通の問題を抱えている。
著者の三村經夫先生は、徳島大学医学部卒の産婦人科医。昭和60年より半田病院(つるぎ町)に勤務し、院長・病院事業管理者を歴任した。徳島県の国民健康保険診療施設(国保直診、町立の病院や診療所)のリーダーで、私もアドバイスを頂いていた。平成23年に退職されたが、近年の活動をこの著書で知った。
もう一人の著者、冨田一栄(とみたかずえ)氏は、税理士で総務省地方公営企業等経営アドバイザー。徳島県にもご親戚がある。徳島県の「県立病院をよくする会」委員で、県立海部病院(牟岐町)に来られたこともあり、私も面識がある。
かつて夕張市(北海道)の経営破たんが大きなニュースとなったが、その後、銚子市立総合病院(千葉県)が休止という出来事があった(平成20年9月)。著者らは、平成25年10月に、同市の行政アドバイザー(医療・福祉・保健担当)に抜擢された。その詳しい活動記録が本書である。同じ2次医療圏の旭中央病院との連携などを考え、指定管理者が医療公社となり再出発したが、道半ばとなっている。
また、平成22年から携わった滋賀県東近江市の病院再編の経過も紹介されている。3つの公立病院から、東近江総合医療センター(旧国立滋賀病院)が中心となり、滋賀医科大学の寄付講座が開設されたとのこと。
ふりかえると、平成19年の公立病院改革プラン(旧改革プラン)では、①経営効率化、②再編ネットワーク化、③経営形態の見直しが議論された。自治体病院の経営形態は、公営型と民営型に大別される。公営型には、地方公営企業法(一部適用、全部適用)、地方独立行政法人があり、民営型には、指定管理者制度(公設民営)と民間譲渡がある。三村先生によると、公設公営と公設民営とは、「大差ない」と。公設民営は、「魔法の杖」でなく、最後は人にかかってくるという。
他、医師臨床研修制度、地域包括ケアや地域医療構想、総合診療医、地域枠制度にも言及している。
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三村先生は愛知県知多市のお生まれで、杉原千敏(リトアニア領事で、第二次世界大戦でユダヤ難民を救うビザを発行した)の瑞陵高校の後輩とのこと。「義の人」であることは受け継がれており、今後もご指導いただきたいと思う。公立病院に関心のある医師やメディカルスタッフ・学生に一読を勧める。
本日より,蔵本分館1階ホール,My Recommendationsコーナーに展示しています。ぜひ手に取ってご覧くださいね。
みなさんのご利用,お待ちしております!
sm