『あの戦争から遠く離れて ~私につながる歴史をたどる旅』
(城戸久枝 / 情報センター出版局)
それでは早速,お寄せいただいた書評をご紹介します。
本作は大宅壮一ノンフィクション賞、講談社ノンフィクション賞、黒田清JCJ新人賞を受賞、テレビでドキュメンタリーやドラマ(『はるかな絆』NHK,2009年)にもされました。作者の城戸さんは、徳島大学総合科学部出身です。
お父さんが中国残留孤児として戦後、中国人に引き取られて育てられ、日中関係改善の時期になって、やっと27歳のとき帰国を果たしました。城戸さんは大学に入るまで、戦争や残留孤児のことにはあまり関心がなかったのですが、ある日父が取り出した箱の中に、帰国のために日本の赤十字に書き送った手紙や手帖などが入っているのを見て、身近な問題として関心を持つようになりました。学生時代に吉林大学に留学、父の足跡を探り、関係者にもインタビューして書いたのが本作です。
戦争の記憶が風化していくなかで、なんとかそれをとどめておきたい、戦争に無関心な戦後生まれの人たちに、少しでも関心をもってもらいたいという思いで書かれています。なにより作者自身が、戦争が他人事ではなく、深く探ると必ず自分とつながってくることを実感したがゆえに、記録というより「記憶」として残したかった作品でしょう。
戦争が遠くになりつつある現代だからこそ、学生の皆さんに読んでいただきたい。
また、本作の子供向けに書かれた作品に、『じいじが迷子になっちゃった』(偕成社、2019年)があります。
本日より,蔵本分館1階ホール,My Recommendationsコーナーに展示しております。ぜひ手に取ってご覧くださいね!
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