『阿波の偉人伝 長井 長義』(渋谷雅之/阿波銀行)
それでは早速,お寄せいただいた書評をご紹介します。
長井長義は徳島出身でドイツに留学してエフェドリンを発見したことで知られていますが、日本の薬学の基礎を作り、東京帝国大学教授、衛生局東京試験所長、大日本製薬会社製薬長など歴任、産官学に渡る活動を展開した人です。女子高等教育に尽力したばかりか、地元徳島では徳島高等工業学校設立にも関わり現・徳島大学薬学部の基礎を作ったり、製藍改良の実験により阿波藍の優秀性を証明したりと、地域にも貢献しました。その銅像は現在、本学薬学部にあります。生家は、なんと中常三島町、大学のすぐそばでした。
本書は本学薬学部元教授だった渋谷先生がこの徳島大学ゆかりの長井長義について書いた本です。史料を読み込み、批判的に解釈を加え、長井の長崎留学には関寛斎の力添えがあったと斬新な解釈を示すなど、鋭い推察力や歴史解釈を随所に発揮しています。また、現代の学会制度や地方行政のあり方、大学運営にも言及し、著者の学会・大学におけるマネジメントの経験に裏打ちされた知識を披露している点も興味深い。
すでに「長井長義 長崎留学」「ドイツ通信」を翻刻して、文献を渉猟してきた実績に裏打ちされた、長井長義への強い思いが書かせた労作です。第41回とくしま出版文化賞を受賞しています。
本日より,蔵本分館1階ホール,My Recommendationsコーナーに展示しております。ぜひ手に取ってご覧くださいね!
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