2016年1月29日金曜日

My Recommendations No.70「天災から日本史を読みなおす : 先人に学ぶ防災」

本学医学部臨床教授で美波町由岐病院院長,本田壮一先生が下記図書をご推薦下さいました。
本田先生,いつもありがとうございます。

『天災から日本史を読みなおす : 先人に学ぶ防災』
(磯田道史著 / 中央公論新社)

書評をお寄せくださいましたので,早速ご紹介します。

作者の磯田道史(いそだ・みちふみ)さんは、1970年生まれの歴史学者で、映画化された『武士の家計簿 「加賀藩御算用者」の幕末維新』の作者。東日本震災後に、浜松市に移住したとのこと(静岡文化芸術大学)。「備える歴史学」(朝日新聞、土曜版be)の連載をもとにしたこの著書は、第63回日本エッセイスト・クラブ賞を受賞した。豊臣秀吉が2回の大地震を体験したこと、シーボルト台風など、歴史を再考するのは、おもしろい。まさに、「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ(ビスマルク)」と思う。
私の勤務の美波町由岐には、日本最古の津波碑といわれる康暦(こうりゃく)の石碑(1380年)があり、太平記に「阿波の雪(由岐)の湊(みなと)」として、1361年の地震・津波が記載されている。この磯田さんの本にも、牟岐町(磯田さんのお母さん(2歳)が滞在中に、昭和南海地震(1946年)に被災した)や、海陽町(若き日の俳優・森重久弥が、同地震に被災した)について述べられている。美波町を含め海部郡は、「日本有数の津波常襲地である。大津波が何度もきて、そのたびに村人は屍体の山を築き、津波から逃げきれた者だけが子孫を残してきた土地である」と書かれている。地震の歴史については、理系研究者の著書が多いが、本書は人間を主人公とした防災史で、読みやすい。
徳島県の防災で重要な、南海トラフの巨大地震については、①約100年の周期で発生。②同時もしくは数年以内に、遠州灘から四国沖まで連動する。③90年より短い周期で起こったことはない。④南北朝時代からは、150年以上起こらなかったことはないと。
磯田さんの母方の家では、「津波の時は何も持たずに逃げる」、「一度、避難したら絶対に物を取りに戻らない」、「地震時に屋内に閉じ込められぬよう、戸口に一本ずつ鳶(とび)口を置いておき、戸の破り方を子どもにも教えておく」とのこと。今から南海トラフ巨大地震の発生までに20年ほどの猶予があるのかもしれないが、この書の震災へのヒントを熟読・実行したいと思う。ご一読を。





本日より蔵本分館1階ホール,My Recommendationsコーナーに展示しております。
徳島県に住む私たちにとって,つねに心にとめておかなければならない,地震・津波への備え。
歴史が,先人たちがそれを教えてくれる,そんな1冊となっております。
ぜひ手に取ってご覧ください!
sm