『大学の未来地図~「知識集約型社会」を創る』(五神真/ちくま新書)
それでは早速,お寄せいただいた書評をご紹介します。
大学改革では良くも悪しくもお手本とされる東京大学、その総長による大学論です。紹介される取り組みは東大だからできるのではと思えるところもあり、やや楽天的すぎる感も否めないが、この本にはこれからの大学のあり方を議論する際に無視できないアイデアや情報が含まれています。また、地方国立大学の存在意義にも言及しています。
本書は、Society 5.0といわれる新しい社会像を見据えて、大学が未来社会のモデルとなるべく実践してきたことの報告です。「知識とそれを活用する人が集積する場」、それが大学だとして、目指すべき知識集約型社会の実現のために大学が重要であると説いています。また、国立大学が全国まんべんなくあるのはメリットである、そこには企業とは異なり長期的視点があり、高度な情報を行き来させるインフラとそれを扱うことができる人材がいるからだとしています。大学マネジメント面でも、大学関連ベンチャー企業支援(UTokyo IPC)のシステム構築など、創意工夫が随所に見られます。
本書はこのように、外圧として改革を捉えるのではなく、よりよい未来社会の実現のために大学は今こそ、主体的に行動すべきであるという姿勢を示しています。「大学改革、またか」と、うんざりしている向きにも、一読をすすめたい。
本日より,蔵本分館1階ホール,My Recommendationsコーナーに展示しております。ぜひ手に取ってご覧くださいね!
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