『医療現場の行動経済学:すれ違う医者と患者』
(大竹 文雄 , 平井 啓/東洋経済新報社)
それでは早速,お寄せいただいた書評をご紹介します。
医者は患者に合理的な意思決定を期待するが、実際にはそうでないことが多い。これは患者の意思決定にバイアスがあるからだという。例えば、「術後1か月の生存率は90%です」と「術後1か月の死亡率は10%です」の患者の反応の違い(フレーミング効果:表現方法が異なるだけで意思決定が異なる)、「がんが消えた錠剤」という広告情報の優先(利用可能性ヒューリスティック:近道による意思決定)、臓器提供の意思表示率はデフォルト(初期設定)によって大きく変わる(ナッジ:行動に一定方向の影響を与えるための仕組みや行為)など、わかりやすい事例が多数紹介されている。一方、生命維持治療の「差し控え」と「中止」が異なって捉えられるなど、医療者側の意思決定に自己のバイアスが影響することを自覚すべきと指摘する。医者と患者の意思疎通を良好なものとするためにも医療行動経済学は学んでおきたい学問分野だ。
本日より蔵本分館1階ホール My Recommendationsコーナーに展示しています。ぜひお手に取ってご覧くださいね!
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