新年あけましておめでとうございます。
徳島大学附属図書館蔵本分館は本日より開館しております。(17時閉館です)
本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
さて,2012年より始まりました蔵本分館テーマ展示も,今年ついに60回を迎えることができました。
忙しいところお時間を割いてご協力くださる監修の先生方,リクエストテーマをお寄せくださる学生・院生の皆さん,コーナーを利用してくださる利用者の皆さんに支えられ,ここまで続けることができました。心よりお礼申し上げます。
記念すべき第60回目の今回は,放射線治療学分野教授,生島仁史先生に監修いただき,「放射線治療」をテーマに関連書籍・雑誌を展示しています。
放射線治療は,手術,薬物療法(抗がん剤治療)と並ぶがんの3大治療法の1つです。
その歴史は古く,1895年のレントゲンによるX線発見の翌年にはすでに,放射線によるがんの治療が試みられています。
また,1900年には皮膚がんをX線で治癒したとの報告が記録されており,X線が発見から非常に早い段階で治療に使われ始めていた様子がうかがえます。
当初は安定した線量を繰り返し照射する技術もなく,照射法に関する論理的な根拠などはありませんでしたが,こうした試行錯誤を続ける過程で放射線の医学利用のため基礎研究は推し進められました。
その成果の蓄積が今日の放射線治療技術の基盤を形作っていると言えます。
その後,放射線治療は放射線物理学,放射線生物学の発展に伴い,急速に進歩しました。治療機器の精度も飛躍的に向上し,現在,最も標準的な放射線治療に用いられている高エネルギー治療装置(リニアックなど)の普及により,有害事象は減少し,放射線治療はがんの根治療法として確立されました。
今後も,分子生物学やゲノム科学などを巻き込んで,さらなる発展が期待されています。
放射線治療は,機能と形態が温存できる点,手術と比較して低侵襲である,などの利点から適応となる病態も多く,集学的治療の中でも重要な役割を担っていますが,それでも国内の放射線治療利用率は欧米に比べて低い状態にあります。
世界保健機関(WHO)の"World cancer report"に,欧米のがん患者では60%を超える放射線治療利用率が,日本では30%程度にとどまっているという報告があります。
放射線治療に携わるスタッフの不足,治療施設の地域間格差の問題などは徐々に解消されつつある一方,チーム医療の充実,他の診療科のがん治療医との連携など,利用率向上のためには,まだまだ取り組むべき課題は残っています。
高齢化が進む中で求められているのは,治すだけでなく,より負担が少なく治療後の生活の質が保たれる治療法です。この二つを両立できる放射線治療に寄せられる人々の期待は,この先ますます大きくなるものと思われます。
今回のテーマ「放射線治療」は学生さんから寄せられご要望によるものです。これからも皆さんのニーズに応じた企画を実施すべく,取り上げてほしいテーマを募集しています。同コーナーに設置したご意見箱にみなさんの声をぜひお寄せください。
「放射線治療」の展示期間は2月14日(水)までとなっています。ご利用,お待ちしております。
今まで行ったテーマ展示の一覧は
http://www.lib.tokushima-u.ac.jp/siryou/theme/
から見ることができます。
ぜひチェックしてみてください!
sm