2018年6月14日木曜日

My Recommendations No.114「連帯の医学」

 今回のMy Recommendationsコーナーには,先端酵素学研究所(次世代酵素学研究領域)教授 福井清先生より,下記図書をおすすめいただきました。福井先生,ありがとうございます。
 それでは,いただいた書評と併せてご紹介いたします。

『連帯の医学』(大高道也/京都大学出版会)

著者の大髙道也先生は、京都大学医学部出身で私の大先輩である。先生ほど医学・医療の臨床から基礎医学そして保健医療行政の幅広い分野・領域にわたって、常に高い志と強い熱意を持って学び実践し続けて来られた医師を私は他に存じ上げない。この書は、先生の生涯を貫く医の志の書であり、将来医学・医療に携わる全ての学生諸君のかけがえのない人生の指針として、この書を推薦する。

大髙先生は大学医局として先ず心臓外科学を選択し、心臓外科医として国立姫路病院等において外科学の方面から臨床医学を探求した後、島根医科大学で実験病理学の分野で高血圧・脳卒中の病態モデルラットを用いた基礎医学・予防医学の研究教育生活に入られた。その後,厚生技官として行政に携わってきた医師として、我が国の健康長寿社会の実現を目指す全ての人々に贈る提言の書として本書を発刊されている。霞ヶ関から我が国の様々な地方・地域とメイヨー・クリニックやMDアンダーソンがんセンター等海外を含めて、第一線での幅広い経験と思索をもとに,医師のモラール(士気)の向上を掲げ、これからの保健・医療・福祉・介護・環境、そして医の心を12章に亘って語っている。

少年時代の長期療養に至った急性腎炎の体験を原点として、医学を目指した先生の初心が、今日に至るまで、脈々と培われ発展されていくその航跡がこの書では明らかとされている。特筆に値するのは、若い医学生たちの世代を超えた学び舎「大津医学生会」の活動を、その創設から今日に至るまで、主導し情熱を持って支援し続けているその姿勢であり、若き日々より志を高く掲げて、挑戦し続けた大髙先生の生き様に、深い感銘を覚える。

グローバルかつ日本人独自の視点と高いビジョンをもって語られる本書を推薦し、一人でも多くの学生の親しむ書となることを期待する。 

 

 
本日より,蔵本分館1階ホール,My Recommendationsコーナーに展示しております。
ぜひ手に取ってご覧くださいね!
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